じゃがいもについて

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じゃがいもの特徴

保存がきくので年中出まわり、煮ものや炒めものなどに使われるほか、サラダ、ポテトフライなど、日本人になじみ深い食品です。

世界の五大食用作物(小麦、水稲、大麦、とうもろこし、じゃがいも)の一つとされています。

ヨーロッパでも消費が多く、ドイツ、ポーランド、ロシアなどでは主食にもなっています。

栄養価も高く、フランスでは「大地のりんご」などと呼ばれて親しまれています。カロリーがご飯の半分ぐらいです。

じゃがいもの旬

日本各地で年中どこかで収穫されていて、保存がきくのでいつでも手に入りますが、旬と言えるのは春の5~6月頃と、秋から冬の9~12月頃の年2回です。

一般的に新じゃがと呼ばれるものは、5~6月頃に九州から出荷されるものを指します。

2大品種と言われるのは、9~10月頃に収穫される「男爵薯(だんしゃくいも)」と、5~6月頃の春作ものがおいしい「メークイン」です。

じゃがいもの種類

世界中には2000種程の品種があると言われていますが、日本で主に栽培されているのは約20種類です。

品種により、食用に市販されるもの、でんぷん原料用、ポテトチップスなどの加工用などに用途がわかれており、でんぷん用や加工用のものはあまり市場には出回りません。

男爵薯(だんしゃくいも)

日本のじゃがいもの代表品種で、単に「男爵」の名で扱われることも多く、じゃがいもの代名詞にされることもあります。現在では、じゃがいも生産高の約60%を占めます。1908年(明治41)に、函館ドック社の専務であった川田竜吉男爵が導入したので「男爵薯」と呼ばれるようになり、1928年(昭和3)には「メークイン」とともに優良品種となりました。形は球状で目のくぼみが深いのが特徴です。肉色は白色の粉質で、でんぷんが約15%と多く、ホクホクした食感が特徴です。煮くずれしやすいのですが、粉ふきいもやマッシュポテト、コロッケをはじめさまざまな料理に向いています。中心に空洞が生じやすい、目が深くて皮がむきにくいなど、欠点は少なくありませんが、広い地域に適応して栽培技術も蓄積されており、長年慣れ親しんだ食味と抜群の知名度で消費者からも生産者からも今なお絶大な支持を得ています。淡い紫色の花は、初夏の北海道風物詩の一つになっています。

メークイン

「男爵薯」とともに日本の2大品種の一つです。名前は[May-Queen]からとられたもので、花の女神フローラの祭りに村娘から女王を選んだことに由来します。日本には1917年(大正6)にイギリスから導入され、昭和30年代に関西方面から人気が広がり全国に知られるようになりました。形はツルリとした長卵型で、目の数が少なくて浅いことが、皮をむきやすいという長所になっています。肉は黄白色のきめ細かな粘質で、煮くずれしにくく、煮ものやシチュー、カレーライスなどの煮こみ料理に向きます。低温で保存すると甘みが増し、しっとりした歯ざわりになります。緑化しやすい、疫病に弱いなど、栽培が難しい品種で、今日のイギリスでは既に栽培されていないのですが、日本では特徴ある形やその名前、甘みのため人気を持続しています。白地に紫色が混じった可憐な花を咲かせます。

農林一号(のうりんいちごう)

「男爵薯」の改良品種で、北海道農業試験場で育成され、1943年(昭和18)にはアルコール原料用として奨励品種となりました。「男爵薯」にとても良く似た形をしていますが、「男爵薯」よりも目が浅く、皮がむきやすいのが特徴です。肉は粉質で、でんぷんは約17%と多く含み、食用のほかでんぷん原料用に使われています。酸化しやすく、切り口が褐色に変色します。水煮すると黒変しますが、粉ふきいもやマッシュポテトに向いています。白の花を咲かせます。

ワセシロ(早生白) (別名)伯爵(はくしゃく)、ネオ男爵、キング男爵

早生(わせ)の食用品種として、1974年(昭和49)、根釧(こんせん)農業試験所で育成されました。いもの肥大が早く、表皮が白いことから「ワセシロ(早生白)」と名づけられました。偏球形で淡黄白色、肉色は白です。肉質はやや粉質で、デンプン含有量は約16%と高く、あっさりしていて上品な食味で男爵に似ています。粉ふきいもやマッシュポテトに適しています。また7~8月ころのポテトチップスに使われています。貯蔵すると粘質に変わり、甘味が増します。花の色は紫です。

トヨシロ(豊白)

北海道農業試験場で育成された品種で、1976年(昭和51)に加工食品用として奨励品種となりました。偏球形で表皮は淡い黄色、肉は白色です。肉質はやや粉質ですが、糖分が低く、揚げても褐色になりにくい特徴を生かしてポテトチップスやフライポテトへの加工が主流となります。家庭料理でもフライポテトなどの揚げもののほか水煮にも向きます。

キタアカリ(北光)

「男薯爵」と「ツニカ」を交雑させ、じゃがいもシスト線虫抵抗性遺伝子を組み込んで作出された品種です。北海道農業試験場で育成され、1987年(昭和62)に登録されました。北海道の線虫発生地域のじゃがいも作りに光をもたらす、という意味で「キタアカリ(北光)」と名付けられました。偏球形の小粒で皮色は黄白色、目はやや浅くて赤いのが特徴です。肉は黄色でやや粉質、ホクホクとしていて甘みがあります。でんぷん価が18%と多く、煮くずれしやすいので、皮付きのふかしいもやベイクドポテト、サラダ、コロッケにむいています。栄養的にも特色があり、ビタミンCやカロチンを豊富に含みます。近年人気急上昇中のじゃがいもです。

紅丸(べにまる)

1938年(昭和13)に、北海道農業試験場で早生で紅色の「レンブケ・フルエ・ローゼン」と収量が多い「ペポー」を交雑させて、でんぷん原料用として作られた品種です。卵型で表皮が紅色をしているのが特徴です。収量が多く品質の良いでんぷんがとれるので、ほとんどがでんぷん原料用になり、市場にはあまり出回りません。貯蔵すると甘みが増し、煮くずれが少ないために煮ものにむき、食用にも人気があります。

ホッカイコガネ(北海黄金) (別名)コガネメーク

1981年(昭和56)北海道農業試験場で「トヨシロ」と「北海51号」を交雑して作られた加工用の品種です。肉色やポテトフライにした色が黄金色であることから「ホッカイコガネ(北海黄金)」と名付けられました。形はメークインに似た長楕円形で皮色は淡褐色、目は浅く、肉色は淡黄色です。肉質はやや粘質で煮くずれしにくく、還元糖が少ないのでフライドポテトにも味色ともに好適です。加工業務用としての流通がほとんどで、市場にはあまり出回りません。

デジマ(出島)

1971年(昭和46)長崎県総合農林試験場で、「北海31号」と「ウンゼン(雲仙)」を交雑し、二期作洋品種として作られました。名前は育成地近くの出島にちなんだものです。長崎を中心に九州で多く栽培されています。春秋2回栽培され、5月と12月に出荷されますが、秋作の方が丸くておいしいです。白黄色の皮は滑らかで外観がよく、肉色は黄白です。肉質はやや粉質でみずみずしく、少し煮くずれすることもありますが、食味は良好で、煮ものやサラダ、揚げものなどにむいています。

ニシユタカ(西豊)

1978年(昭和53)長崎県総合農林試験場で、「デジマ」と「長系65号」を交雑し、二期作洋品種として作られました。名前は西南暖地での豊産性にちなんで付けられました。春夏ともにたくさん取れ、特に春作で優れていて、春先に新じゃがとして出まわるものの大部分はこの品種です。長崎や鹿児島など、主に九州で多くつくられています。形は扁球形で目が浅く、外観はきれいです。肉は淡い黄色、やや粘質で煮くずれは少ないので煮こみ料理や、やや硬くて串で刺しても崩れないので、おでんなどに向きます。

品種名ではありませんが...新じゃが

もともとは、その産地でその年に最初にとれた新物じゃがいもを「新じゃが」と呼んでいましたが、3~5月頃に九州などから出荷される早出しの小粒なじゃがいもを「新じゃが」と呼ぶようになりました。最近では、さらにその定義があいまいになり、1~2月の沖縄産やそれ以降の北海道産のハウスものを新じゃがと呼ぶこともあります。早掘り、早出しのため、小粒で皮が薄く柔らかいのが特徴です。みずみずしく、丸のままゆでるとつるっと皮がむけて新鮮な土の香りが楽しめます。

じゃがいもの加工品

用途別には、総生産量のうち、30%がでんぷん原料用、20%が食用市販、15%が加工用で、最近ではポテトチップスなどの加工用が増えてきています。

じゃがいもでんぷん、馬鈴薯(ばれいしょ)でんぷん

じゃがいもからとったでんぷんのことで、市販されている片栗粉(かたくりこ)のほとんどがじゃがいもでんぷんです。北海道が主産地で、料理用のほか、ねり製品や織物用の糊(のり)、医薬品などにも利用されます。ちなみに本来の片栗粉はユリ科の「かたくり」の地下茎からとったでんぷんのことで、かつては広く野山に自生していましたが、現在では数が少なくなって、じゃがいもでんぷんが代用されるようになりました。

じゃがいもの選び方

ふっくらと丸みがあってでこぼこが少なく、皮にしわや傷がないものを選びましょう。

大きすぎるものは、中にスが入りやすいので注意しましょう。

芽が出ていたり、緑色に変色しているものは避けましょう。有害成分が生成されています。

表面があまりでこぼこしていないものが、調理しやすいです。

「男爵芋」や「キタアカリ」は、中くらいの形が揃った球形で、ずっしりと重みのあるものが良品です。完熟すると皮の表面に網目がかかります。大きすぎるものは中心が空洞だったり水っぽかったりするので注意しましょう。

「メークイン」や「ホッカイコガネ」は大きくても大丈夫です。皮は薄く滑らかで、しなびていないものを選びましょう。

じゃがいもの調理法

調理法に応じた品種の使い分け

品種の特徴にあった料理法を選ぶのが一番のこつです。

  • 男爵系のじゃがいもは、でんぷんが多い粉質系が特徴で、粉ふきいもやマッシュポテト、サラダ、コロッケなどにむきます。煮くずれしやすいので、一般に煮ものにはむきません。ただ、肉じゃがやカレーライスにはとろっとする男爵の方が好き、という人もいるので、要は好みですね。
  • メークイン、ニシユタカ、ホッカイコガネなどのでんぷんの少ない粘質系は、煮崩れがしにくいので、スープやシチュー、カレーライス、肉じゃが、おでんなどの煮込み料理に向いています。このとき調理する3~4日前に冷蔵庫の野菜室に入れておくと、甘みが増してさらにおいしくなります。
  • キタアカリは、皮つきのふかしいもやコロッケ、ポテトサラダなどに適しています。
  • 皮が柔らかい春の新じゃがは、よく洗って、皮ごとふかしたじゃがバターや揚げものが美味しいです。

灰汁(あく)抜きの方法

切り口が茶褐色に変色するのは酸化酵素のはたらきによるものです。水に入れて、空気に触れないようにすると変色しません。ゆでると灰汁(あく)がでて黒ずむので、切ったらすぐに水にさらします。灰汁(あく)抜きができるのと同時に切り口が褐色に変ずるのを防ぐことができます。特に揚げものにするときには、ときどき水を替えながら充分さらした後に調理します。

じゃがいも芽の毒

じゃがいもの芽にはソラニンという有毒物質が含まれていて、大量にとると中毒を起こすことがあり、苦みがあっておいしくもありません。調理の際に芽が出ていたら根元を芽ごとえぐりとります。また、芽以外の部分でも緑色になった部分にはソラニンが生成されているので、これも厚めに切って捨てます。それ以外の部分は食べても問題ありません。ソラニンは光を当てると増えるので、じゃがいもは必ず暗い場所で保存しましょう。

新じゃが

新じゃがは小さくて火が通りやすいので、丸ごと炒めたり、揚げたり、煮ものにするとよいでしょう。皮の部分に栄養分が豊富ですので、皮ごと使うと良いでしょう。

新じゃがの皮は薄いのでむきにくいですが、水に10分ほど丸ごとつけておいたあとで、タオルか手ぬぐいで揉むと簡単にむくことができます。それでも取れない部分は包丁でそぎとります。

ゆでるとき

ゆでるときや蒸すときは、皮付きのまま湯に入れてゆで上げ、あとで皮をむく方が、ホクホクとして水っぽくならず、ビタミンCの損失も少なくなります。

丸ごとゆでるときは水からゆでます。沸騰してからゆでると、中心まで火を通るころには外側がゆですぎになってしまうからです。

皮をむいて料理する場合は、できるだけ煮汁ごと使えるように水を少なめにしておくなどの工夫をすると、栄養を失うことが少なくなるでしょう。

焼くとき

丸ごと焼くときは、十文字に切り込みを入れるか穴を開けてから焼くと、適度の水分が出てホクホクに焼き上がります。弱火から中火へと徐々に加熱し、途中で向きを変えたりしてムラなく焼くのがコツです。

裏ごしする時の注意

じゃがいもの裏ごしは熱いうちにします。冷めると粘りが出て来て、裏ごししにくくなり、歯ざわりも悪くなります。

ほかの食材と一緒に揚げるとき

揚げものの最後にじゃがいもを揚げると、じゃがいもの水分が蒸発する時に、油の臭いや煙を一緒に蒸発させる作用があり、油の持ちがよくなります。

電子レンジで加熱する

よく洗って皮つきのまま、水気を残してラップにくるんで加熱します。時間は1個につき5分が目安です。途中上下を返すと加熱ムラが解消できます。

じゃがいもの保存法

光に当たると光合成により有毒物質が生成されるので、直射日光はもちろん、室内の明るいところも避け、光があたらないようにします。

収穫後約3ヶ月間は休眠して萌芽(ほうが:芽を出すこと)しない性質があります。この間は7~15℃での常温保存が可能です。室内の風通しのよい冷暗所で、ポリ袋から出して麻袋や紙袋に入れるか、新聞紙にくるんでかごやネットに入れて保存すると良いでしょう。

品種にもよりますが、3~5℃の低温で保存するとでんぷんがしだいに糖分に変わり甘みがつきます。この場合、煮ものにすると甘みがのっておいしくなりますが、揚げる場合には色が濃くなりますので注意してください。なお、乾燥すると水分が失われてしわしわになってしまうので、家庭用冷蔵庫での保存には注意が必要です。野菜室で3~4日ぐらいが目安です。

一般家庭では難しいのですが、温度が2℃で適度な湿度を保てる環境では、萌芽せずに長期保存できます。

生のものを0℃以下にするとでんぷん質が破壊されて、味が落ちます。冷凍保存には向きません。

芽が出やすい春先や、大量に手に入ったときは、リンゴを1~2個一緒に入れると、リンゴからでるエチレンガスの作用でじゃがいもの萌芽を防止することができます。

新じゃがは、水分を多く含んでいるので、風味が時間とともに薄れて長期保存には不向きです。食べれる分だけ買って、早めに使いきりましょう。

ゆでたものを冷凍すると中の水分が凍ってしまって、解凍したときにスカスカになってしまいますが、マッシュポテトにして繊維をこわしておくと冷凍保存が可能です。カレーやシチューを冷凍するときも同じで、じゃがいもだけはつぶしておくと良いでしょう。解凍するときは電子レンジで一気に解凍します。

じゃがいもの栄養・効能

主成分はでんぷん主とした炭水化物ですが、カロリーは他のいも類に比べてずっと少なく、これにタンパク質、脂肪と続きます。特に脂肪の少ないのが特徴です。フランス語で「大地のリンゴ」と言われる程、ビタミンCやB1、B6などが豊富です。そのほか、ミネラルではカリウムや鉄を含み、また食物繊維の多い点も注目に値します。

ビタミンCの有効供給源

品種や貯蔵期間などで差があるのですが、ビタミンCが100g中に15~40mgほど含まれ、みかんの70%程度と豊富に含まれています。そして、じゃがいものビタミンCはでんぷんに包まれているため、熱に強いのが大きな特徴で、青野菜に比べると一度に多量に食べられる上に保存がきくということもあって、ビタミンCの重要な供給源の一つとなります。

【参考資料】http://o-e-c.net/syokuzai/jyagaimo

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