ノロウィルスとロタウィルス、どう違うの?

ノロは吐き気、ロタは下痢が特徴

ウィルス

 

毎年冬に入る前からインフルエンザと同様に流行するのが、ウイルス性胃腸炎です。ノロウイルスロタウイルス、といったものが有名ですね。 ノロウイルスとロタウイルス、どう違うか知っていますか?

「以下は、知ろう小児医療守ろう子ども達の会」で発行しているメルマガの中から、小児科の先生が書いてくれたものを抜粋してお届けします。

 

激しい吐き気が特徴のノロウイルス、晩秋から冬の中盤まで流行

 

ノロウイルスは、秋の終わりごろから冬の中ごろにかけて毎年流行します。特徴的な症状として、突然の嘔吐で始まることが一般的です。吐き気は激しいのですが、半日くらいでおさまる事が多いようです。

下痢を伴うこともありますが、ほとんどが軽い下痢で済みます。38度前後の熱を伴うこともありますが、1日くらいで下がります。

嘔吐が長引き脱水状態になれば、点滴や入院治療が必要になりますが、そこまで重症化することは比較的少なく、たいていは自宅でのケアで回復します。基本的には、数日で自力で自然によくなる感染症です。ただ注意が必要なのは、嘔吐物が撒き散らされるため、成人への感染力がとても強いことです。

 

一方、ロタウイルスは、というと…。

激しい下痢と発熱が続くロタウイルス、冬の終わり~春先に流行

 

一方、ロタウイルスはノロウイルスより少し遅れて、冬の終わり~春先(インフルエンザの流行の終盤にかかることが多い)にかけて流行します。突然の下痢と嘔吐、発熱で発症します。ロタウイルスは、激しい下痢や発熱が長く続くのが特徴です。

基本的には、1~2週間ぐらいで自然に良くなる感染症ですが、乳幼児に多く2~3歳未満の小さな子どもは脱水が進み、点滴や入院治療が必要になることが多くなります。

水分がまったくとれず尿が半日以上出ない、顔色が悪くぐったりしている、皮膚がシワシワと乾燥してくる、などの脱水症状に注意してください。

任意接種になりますが、ロタウイルスワクチンが生後6週から接種できます。生後2カ月から、ヒブや肺炎球菌ワクチンなどと同時接種で受ける人が多いようです。

 

最も多い感染ルートはウイルスの付いたものを食べたりなめたりすること

 

ノロウイルスもロタウイルスも、感染の仕方は同じ。患者の便や吐物に含まれるウイルスが手などを介して運ばれ、周囲の人の口の中に入ることによります。ウイルスの付いた食物を食べたり、ウイルスの付着したおもちゃをなめたりしても感染します。

予防法としては、むやみに口の中に物を入れない、手洗いとうがい、なのですが、現実的には…特に乳児の場合は難しいですよね。最低でも、外出後は手を洗う、不特定多数の人が触るようなものは口に入れない、なめさせないなどの対策を心がけましょう。

 

吐いた直後に水を飲ませるのは逆効果!?

 

さて、嘔吐下痢の症状を起こしてしまったら、家庭でどう対処すればよいかについてお話します。

まず、覚えておいてほしいのは、吐いてもすぐには飲ませない、ということです。

1回吐き始めると、数時間は周期的に強い吐き気に襲われます。脱水を恐れるあまりに、吐いた直後に水分をたくさん与えてまたすぐ吐く、と言う悪循環を繰り返し、驚いて救急を受診する方が多く見られます。

脱水症状になっては大変!と焦る気持ちは分かるのですが、吐き始めたら数時間は何も与えずに熱を測ったり、背中をさすってあげたりして様子を見るようにしてください。

数時間経つと、吐き気が少し落ち着いてきます。本人も飲水を希望するようになります。そこから水分を、一度に大量ではなく一口位ずつ飲ませていきます。

何を飲ませればよいかというと…。

市販の経口補水液(OS-1など)や病院で処方されるソリタ顆粒などが吸収がよいとされます。ノロウイルス感染では夜中に急に吐き始めることが多いため、普段から自宅に買い置きしておくのがおススメです。水分を少量ずつでも吐かずに飲めるようになれば、ひと安心。

そこからは30分~1時間おきぐらいに顔色を見ながら、少しずつ飲む量を増やしてください。

(ここまで、「知ろう小児医療守ろう子ども達」の会のメルマガ「ウイルス性胃腸炎」より抜粋)

 

病院の待ち時間でもできる、回復を早める経口補水療法

 

先ほど紹介した経口補水療法は、とても有効なのです。

鹿児島のみなみクリニック・南武嗣先生によると、脱水症状の治療として点滴を年間276例行っていたそうですが、経口補水療法を導入したことで点滴治療が必要な患者が、現在は年間20~30例まで減少していると聞きました。

 

もちろん重症の子どもには点滴は必要ですが、30~40分経口補水を試してから点滴をすることで回復も早く、血管が太くなり点滴がしやすくなる(子どもは血管が細いので点滴がしづらい)そうです。

病院を受診する際は、待ち時間を利用してごく少量から経口補水を始めてみてもよいでしょう。南先生も「診察室に入る頃には大分回復している子どもが多い」と言っています。

下は、南武嗣先生に教わった、飲ませ方の目安です。

  • 体重10kgのこどもの場合……10ml/5分 → 1時間で合計120ml
  • 体重15kgのこどもの場合……15ml/5分 → 1時間で合計180ml
  • 体重20kgのこどもの場合……20ml/5分 → 1時間で合計240ml

 

嘔吐の後にたいてい下痢をする

 

また、小児科の先生方から聞いてなるほど!と思ったのが、「嘔吐の後にたいてい下痢をする」ということです。

もちろんすべてのケースではありませんが嘔吐の後に下痢が続くことが多い、と知っているのと知らないのでは心構えが変わってきます。

嘔吐は対処が大変なので、嘔吐が落ち着いてほっと一息ついてしまい、下痢を甘くみるという人も少なくありません。小児は頻繁な下痢をすると脱水に陥りやすいので、気付いた時には重症脱水、という子も多いそうです。

下痢のときにも経口補水療法が効果的です。水分がある程度とれていて、顔色がいいようならば心配ないでしょう。食事は無理に進めず、お粥ややわらかいうどんなど、消化の良いものを少量ずつ試していってください。

下痢の回数が減り、便が少しずつ固まってきたらひと安心です。

 

水・塩・砂糖で自宅でもすぐ作れる経口補水液

 

経口補水液は市販されていますが、下の材料を混ぜるだけで家庭でも作れます。

【経口補水液の材料】

水 500 ml

塩 1.5g(小さじ3/10)

砂糖20g(大さじ2と1/5)

※レモンやグレープフルーツの果汁を加えると飲みやすくなる

 

【参考資料】http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=1781